0人が本棚に入れています
本棚に追加
俺を見た。
『その子を見かけたのは、日曜日朝午前10時の品川駅のホームで見かけたんだ。澄んだ瞳で髪を靡かせて、それはそれは可愛かった。』
『ナンパしたらよかったのに。』
『それがあ、一瞬のことで思わず見とれちゃっててさ』
『そっか』
俺は上の空で何故か元カノのことが気になっていた。
ーー元気にしてるかなあーー
元カノのことが忘れられず今もまだ元カノとペアのリングを机の引き出しにしまってある。あらゆる元カノとの思い出が頭の中の記憶と写真と共に色褪せないで欲しいなと微かに願いつつも。
『そしたら、日曜日の朝午前10時に品川駅でとりあえず待ち合わせする?』
『わかった。じゃあ日曜日なー』
『おう。』
すれ違う通行人は家族連れが多くいつもより雰囲気が和やかで、お正月前の帰省する人達を掻き分けて、俺は優に携帯電話で電話をかけた。
『もしもし、優?』
『おはよ』
『おはよ今どこ?』
『改札口の付近』
見渡してみたが人が多すぎて優がいない。
どこにいるんだろ。ーーポンポンーー誰かが肩を叩いた
『優?』
振り返ったら元カノのみきがそこに立っていた。
『え?』
『久しぶり』
頭が混乱していて目の前の状況をうまく飲み込めない。
『偶然だね。』
『うん』
『何してるの?』
『優と待ち合わせ』
『そうなんだ。私もちょっと友達と約束』
『じゃあ』
『うん。またね』
ずっと後ろ姿を見送った。ついていきたかった。
『ついていけばよかったのに』
『あ、優。俺の心の声が聞こえたかと思った』
『やっと見つけた。探し回ったよ』
『でさあ、いいこと考えたんだ』
『何?』
『俺一目惚れした子を見つける為に暫くナンパ師になろうと思うんだけどどうだろ』
『いいんじゃない?見つかるといいね』
笑顔で言えたのはさっきみきと出会えたから、気分がいいから。優は意気込んでいるようで、真顔でその場にいた。
結局優は一人で探すと言い出し、そのまま俺は久々の品川を散策しに行くことにした。俺はジーパンにチェックのシャツで、オフィス街に似合わぬ格好で歩いていた。俺は前働いていた店の付近に来ると店の休憩時によく行っていた懐かしくもある灰色の看板のオムライスの店に入った。昼時ではあるが、珍しく店は空いていて、木漏れ日が心地よくてほっと一息出来る。
『いらっしゃいませ』
最初のコメントを投稿しよう!