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親は父親と母親は共働きで日中は皆家にいない。俺はパソコンをつけて、snsを見ながら、聞きなれたバンドの音楽をヘッドホンの音量を調整して耳に被せて時間が経つのを忘れる。家で過ごす休日は、大抵こんな感じだ。
ありふれた日常がどんなに大事かはこの自分自身の中にある誰にも邪魔されない、時には一人になりたいという願望をずっと叶えてくれる、一種の魔法でもあるような気がしてならない。ふと窓の外を見渡すと、夕暮れの空が家々の辺りを暗闇に包み込み、ぽつりぽつりと付き始める、民家のライトの明かりだけが、暖かみを浮き彫りにしていた。
小腹が空き、ダイニングルームに行くと、食卓には三人分の食事が用意されていた。父は向こうのテレビの前でチャンネルを無造作に変えていた。俺は席に座り空腹を満たすことに集中した。母は台所に立ち、食器を洗っていた。後ろ姿は凛としていて、僕に疲れを見せない。だからいつも自然とご飯を食べていて、美味しいありがとうっていう言葉が心に浮かぶ。
『作朗』
俺を父が呼んだ。
『今度な、マウンテンバイクの大会に出ようと思うんだ。昔から自転車が好きでな、決めたんだ。』
『そうなんだ。』
『お前は何に夢中なんだ?』
口から言葉は出かかったが、伝えるのを止めた。俺は流石に元カノとは言えなかった。俺はすぐさま自分の部屋に行った。
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