第一話

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 いつも食卓にはちょっとした箸置きがいつも添えられているが、このところ気にしたことが無かった。それをぼーっと眺めている。 『なにボーッとしてー』 親にしかられた。 『箸置きは無駄じゃないのかな?お洒落に置かれるためなのかな?』 『どうなんだろうねー。お洒落に見せるためでもあるし、ちょっとした、相手のための心遣いなんじゃないのかなあ。』 『そうなんだ。』  俺はもう一度元カノに電話した。トゥルルルルルトゥルルルルルル 『はい。もしもし。』 『あ、もしもし。』 『久しぶり。元気?』 『元気だよ元気?』 『うん』 『今度会えない?』 『うん。会えるよ。』 『いつがいい?』 『今度の土曜日。』 『うん。わかった。待ち合わせは、井の頭公園の門の前でいい?』 『うん。いいよ。』 『じゃあおやすみ』 『おやすみ』  付き合っていた当初は、どちらともなく電話しては、長電話をしていた。 今日あった出来事や、あの子がこんなこと言っただとか、愚痴も言い合っていた。この頃は、誰とも長電話していない。夜明けを待ちながらずっと長話がしたい。あの頃のように。
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