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周囲の者達にしてみれば、二人はどう見ても付き合っているとしか思えないのだが、当の本人達にはそんなつもりはまるで無かった。あまりに近すぎて、異性として見ることなど考えもしなかったのだ。
だから。いつの間にか、隣に立つ相手の背が自分よりもずっと高くなっていたことに気づいた時も、もう一方がその身に花開く寸前の芳しさを備え始めたことを知った時も、お互いそれを口にするどころか、あえて意識の外に置いて気づかぬフリさえしていた。
そういう相手ではないと思っていた。
「お前なあ、そんなことで世間様が納得すると思ってんのか? ふざけんなよ」
指を突き付けて言い募る吾郎に対して、翼は小声でボソッとつぶやいた。
「んなの知るかよ。だいいち、あいつには他に好きな男がいるんだぜ」
「えっ、ウソ。マジ?」
「だって、こないだあいつが言ったもん」
思わず立ち止まる吾郎をムッとした顔で睨み付けながら、翼はつい先日の出来事を思い返していた。
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