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「ああー……、そ、そうなんだ。んじゃあ俺こっちだから。また明日なー」
「ああ」
「気を落とすなよー」
と手を振りながら去って行く吾郎に、「うっせえバーカ」とこちらも手を振りながら、あーあと心の中で溜息を吐く。
バレンタインなんかどうでもいいや、さっさと帰って夕飯前にカップメンでも食べよう。と、前方に目を向け足を速めようとしたその時。人混みの中に見覚えのある制服姿を見つけた。
あの特徴的な大きなポニーテールは、間違いない。ひばりだ。
「なんだこれ、タイミング悪すぎだろ」
気まずい。とにかく気まずすぎる。くっそお、吾郎のやつが余計なことを言うから。
そのまま無視して行ってしまおうかとも思ったが、別にあいつと何かあった訳じゃないし。第一あの前を通らなければ家に帰れない。わざわざ遠回りをしてまで逃げるなど、考えも寄らなかった。
やむを得ない。
「おーい、ひば……」
翼はひばりの後ろから近付きながら声をかけようとして、ふと口をつぐんだ。
ひばりは通りの端にひとり佇み、通りの向こうをじっと見つめている。誰かと待ち合わせ? いや、それにしても少し様子がおかしい。
すぐ後ろに立つ翼にも、気付く様子はなかった。
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