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翼はそのあまりにも真剣な様子に戸惑いながら、釣られて視線の向かう先へと目を向けた。
そしてそこに、先日ひばりが好きだと言っていたその人、三年生の先輩の姿を発見したのだった。
そして同時に、隣を並んで歩く女生徒の姿も。
二人は楽しそうにおしゃべりをしながら、商店街を去ろうとしている。その関係がただの友人同士でないことは、相手の女生徒が先輩に体を寄せ腕を絡めているのを見れば、一目瞭然だった。
先輩に彼女がいるなんて、全然知らなかった。いや、ひばりだって知らなかっただろう。
ひばりは、その様子を身じろぎせずに見つめ続けている。
そして二人の姿が雑踏に紛れて見えなくなると、ふうと小さく溜息を吐き、それから唐突に後ろを振り返った。
あっ、と思った時にはもう手遅れだった。翼は目を逸らすことも出来ず、ひばりと真正面から向き合ってしまった。
驚いたひばりが目を見開く。そこに涙が浮かんでいるのを、翼は見逃さなかった。
「つーちゃん」
「あっ、あの……」
「ずっとそこで見てたの?」
「ご、ごめん! そんなつもりじゃ」
ひばりは狼狽える翼に一瞬怒りを込めた目を向けたが、すぐに表情を緩め、フッと笑った。
「あーあ、恥ずかしいとこ見られちゃったな。いいよ、つーちゃんなら。でも他の人には内緒にしてよね」
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