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うつむき加減で歩いていたひばりは、いきなり横に現れた翼に驚いた。
「つーちゃん!」
翼は前を向いたまま、黙って歩き出す。
「どうして」
「……送ってく」
ぶっきらぼうな一言。
ひばりは思わず立ち止まる。前を行く翼の背中を少しだけ見つめ、それから小さな声で呟いた。
「ん……、ありがと」
その言葉は届いたのか。前を向いたまま足を止めた翼に駆け寄り、手を繋ぐ。幼い頃いつもそうしていたように。
昔とは違う大きな掌に、戸惑いながらそっと力を込めると、彼もぎゅっと握り返してくれた。
その力強さと、変わらぬ温もりが嬉しくて、涙が出そうになった。
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