【プロローグ】

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 その男――『レオ』は大学二年生であり、講義がない休みの間はこうして一人寂しくPCと向き合っている。  ――だがちょっと待て、と。  大学生というのは、その……世間的なイメージでは『リア充』という生き物ではないのかと。  男の大学生であれば、彼女の一人や二人いてもおかしくないのではないか、と訊きたいところ――だが!  そんなものがいれば、こんな“日曜日”という絶好のデート曜日に一人寂しくPCと向き合っているわけがないだろうがッ!  そもそも『イケメンフェイス』に生まれなかった時点で、男は既に負け組なのだ。  となれば、レオもまたイケメンに生まれることができなかった敗者ということで。  だからこそ――彼には彼女と呼べる女性がいない。  だからこそ――彼は休みであっても孤独で。  しかしまあ……  一度も“彼は今恋をしていない”とは言っていないので。  彼が抱いているその片思いの恋は、だがいつの日か実らせてみせると。  そう意気込むレオに、しかし今の彼の姿は。 「――ほうほう、RTA大会とな。ならば見るしかないな。……どうせ暇だし」  …………『努力』という文字が辞書から完全に消えたとしか思えない。
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