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――突如、レオ一人しかいないこの部屋の中で。
明らかに、“女の声”であろうその声が響いた。
しかしながら、今まさに人生の至福の時間を謳歌しているレオにその言葉は、
「うおっ……ヤッベェ、こんな方法あんのかよ。もはやチートじゃん」
「え、聞こえてないの? え、冗談でしょ? 嘘でしょ?」
「そりゃこんなチート使われたら時間なんか大幅に縮められるわ。つーか、これって大会的にはオーケーなの? 俺達の今までの努力は?」
「いやいや、聞こえてないはずがないわよね。実際聞こえてるんでしょ?」
「……あー、大会的にはルール違反しているわけじゃないからセーフ扱いかチクショウ。一体どんな犯罪的思考を持った変態なんだ? 少しで良いからその脳を分けてくれコンチクショウ」
「ねえ、聞こえているんでしょ? わざと無視しているんでしょ? そうなんでしょ?」
「あー、ホント頭悪いのって努力すれば何とかなるものなのかな。遺伝子で決まるとか言ってるけど、それが事実だったらこの世界マジでクソゲーだわ」
「――――」
必死に語りかけているその女性の声に。
だがレオは冗談抜きで、“本気で”気が付いていない。
それはその声の主がレオの視界外にいることもあるが――それよりも重大な点が一つ。
――『ヘッドホン』という存在だ。
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