歴史

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 しかし、勘違いしないで欲しい。  集中して聞き入ってるわけでも、衝撃を受けているわけでもなんでもない。  きっとクラスメイトの大半は私と同じ気持ちだろう。  眠たい。  お昼ご飯を食べた後、午後のゆったりとした暖かさ。  いくら人類の悲惨な歴史を伝えられても頭に入ってこないだろう。 「私も、二十年前に従兄弟を失った。瞬間移動のできる能力を持っていたんだが、移動先を狙われて即死だったそうだ。未来予知の能力者がいたんだろう……」  先生の話は耳から抜けていくようだった。  確かにこの国には、この世界には能力を持った人と能力を持ってない人がいる。  なんだ、能力持ってないんだ、とか。ださい能力で残念だな、とか。そんな程度の子供の諍いなどに用いられたりもするくらいのものだ。  だからと言って自分達が生まれる前の戦争に感情移入なんて出来ない。  お伽話と同じような感覚だ。 「歴史の先生の話、めっちゃ長くなかった?」 「でも、なんか泣けたなぁ。うち、叔父さんが亡くなってるから」  友人たちがそう語る中で私も口を開いた。 「それより私はテストの方が心配だなぁ。明日、英語と数学と化学も小テストあるじゃない?」  二人とも慌てたように声を上げる。 「暗記だよね! 自信ないなぁ」 「ミラはなんやかんやいつもできてるよね! 羨ましい」  そんなことないよ。そう言って笑った。  そう、私たちにとって戦争の歴史よりは明日の試験の方が重要だ。  今を生きる私たちは、今の方がよほど問題があると言えるだろう。 「ただいま」  おかえりと言葉を返す彼女は椅子に座っている。  近付いて頭を殴りつけると凍り付いてぼとりと落ちた。  今の方がよほど問題があるのだ。
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