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ミラ・ティスト
私の名前はミラ。
孤児院で育った。
両親が生きてるのか死んでるのかすら私は知らない。
私が六歳になるとティストさんの養子になって個児院を出た。
しかしティストさんは私に家とお金と苗字と召使いを与えると二度と会うことはなかった。
この召使いが問題だった。
召使いは老若男女問わず、日替わりにいた。
彼らは一様に赤茶色の仮面を被っているので顔がわからない。
私の世話を焼きはするが最低限の関わりしかしない。
私が泣こうが怒ろうが笑おうが関わっては来ない。
お友達になりたい。親代わりになって欲しい。親しくなりたい。そんな私の気持ちは無視だった。
ある日、車とぶつかりそうになった。
頭が真っ白になって動けない私を彼は突き飛ばした。
血まみれになって動かない彼に駆け寄り、私は泣きながら謝った。
「すぐに代わりが行きます」
いつもと同じ口調だった。
感情のない最低限の言葉。
私は結局彼の顔も名前も知らずに終わった。
次の日、同じ仮面を被って同じ口調で私の家に現れたのは中年の女性だった。
家に帰れば家族がいる。そんな普通の家庭が羨ましかった。
私が家に帰っても訳のわからない仮面をつけた召使いが一人いるだけだ。
凍って落ちた頭を蹴飛ばして溜息をついた。
牛乳をカップに入れてレンジで温めていると仮面をつけた少年がやってきた。
少年は死んでいる召使いの体と頭を回収すると消してみせた。
消すというのは語弊がある。
彼らの能力はみんな同じ物だ。
異空間へと捨て去ることができる。見る限りではそう言った能力だ。
「よろしくお願いします」
少年はそういうと椅子に座った。
もう話す気はないらしい。
「せいぜい頭落とされないように気を使っておきなさいよ」
空のカップを彼に差し出す。
「はい」
彼が受け取った。
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