6人が本棚に入れています
本棚に追加
出会い
「ミラ、紅葉さんって知ってる?」
友人にそう言われて首を傾げた。
なんとなく聞いたことがあるようなないような。
私の態度に痺れを切らしたらしい彼女がいう。
「この街出身で隣の国の王様に嫁いだすごい能力者の人だよ!」
聞いてみてもどうもしっくりこない。
国同士の諍いもなく、能力者非能力者も対等とくれば、誰がどこに嫁いだ離婚したなんて珍しい話でもなんでもない気がする。
「フリーデンの英雄じゃん!」
ああ、とようやく納得がいった。
歴史の教科書か何かに載っていた気がする。
二十年前の戦争はテロリストが引き金だった。
テロリストたちは各国にテロを行い、国同士をいがみ合わせて世界中を戦争へと導いた。
テロリストの集団は三十名ほどだった気がする。
人数こそ少ないものの強力な能力や覚悟を持ち、手強い人間揃いだったらしい。
しかし、テロリストたちとは逆に戦争の終結のために奮闘した者たちもいる。
国境を越え、目的を共にした彼らはフリーデンという組織を名乗り、世界中を巡りテロリストたちと戦った。
今の平和があるのは彼らのおかげでもある。
英雄。確かに彼らにふさわしい言葉だ。
その中の一人にこの街出身の女性がいる。
確か、紅葉という名前の女性だ。
戦争を終えた後、同じフリーデンの人と結婚した。
そうか。それが隣の王子だったのか。
合点がいって頷いているとそわそわしている友人が言った。
「紅葉さん、帰ってきてるんだって! 会いに行こうよ!」
最初のコメントを投稿しよう!