クリーニング店

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新井さんが言うには、その古い洗濯機は昔から血液専用として使っていたそうです。 昔は、今のように使い捨ての時代ではなかったので、怪我をして血がついた服を持ち込むお客さんがこの辺りでは多かったそうです。 小田さんの開発した血液専用の洗剤はとても優秀で、その噂を聞きつけた悪い人たちが、ばれないように依頼することもあったそうです。 どんな悪いことかというのは、私が聞いた唸り声や悲鳴で想像が出来ました。 現在は使っていないのですが、小田さんがお客さんにどうしてもと頼まれたときにだけ、あの古い洗濯機を回すそうです。 ただ、時々不可解なことが起こり、そのせいでバイトが次々とやめていくそうです。 私も、さっきの事でやめたいと本気で思いました。 その事を伝えると、新井さんは「その方がいい」と言いました。 「俺はもう色々な血に触れてしまった。毎日のように、あの古い洗濯機の音が聞こえる。中を覗いたかい? どんなに内槽を掃除しても、壁面の血が消えないんだ。最初は、指紋のようなシミしか見えなかったのに」 そう言って、新井さんは古い洗濯機のガラスの蓋に指をなぞりました。 そこには、前よりもくっきりとした指紋があったのでした。 その後、私は店を辞めました。
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