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そんな俺に電話がかかってきたのは、それから数日後のことだった。
あれから和緋とは会っていない。
連絡も無ければ、自宅や会社に迎えに来ることもない。
そこで気づかされるのだ。
俺は和緋に甘えていたのだ、と。
連絡は常に向こうから。
会いに来るのだって和緋からだ。
だから、俺から連絡するということ自体に抵抗がある。
簡単に言うと。
何と連絡すればいいのか、わからないのだ。
そんな折での電話だったため、ワンコールで出てしまった。
誰からの着信かも見ずに。
それに気づいたのは、着信マークをタッチしてからだった。
「はい」
平静を装い、当たり障りない受け取り方をする。
電話口から聞こえた声は、期待した人物のもの、ではなかった。
むしろ、なんだか嫌な予感が……
「今、アメリカにいる。会社にいるか?」
え……………………………
…………はァァァァァ!?
突然のことに驚きすぎて、叫びは声にもならない。
とりあえず、今日の予定を確認し、夕方の会食までは会社にいることを伝えたところで、電話は切れたのだが。
なぜいきなり来ようと思ったんだ?
何か話したいことでも………?
不安になってくる。
俺と和緋の関係がまた……?
別れろ、とでも言われるのだろうか。
もしそう言われたら………
誰もいない社長室でウロウロと歩き回り、この後起こるのだろう出来事を想像した。
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