[1] おわりのはじまり

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柳瀬グループのアメリカへの企業拡大も軌道に乗り、忙しかった和緋とも会う回数が増えてきたある日のことだった。 暗い顔をした和緋が早乙女のアメリカ本社へやってきた。 一目で何かがあったことくらいわかった。 そしてその内容も、なんだか予想ができてしまって。 社長室で2人きりとなった瞬間、彼は俺を後ろから抱きしめてきた。 手を腕に当てるが、固く結ばれた腕は離れることなく。 まぁ、外そうとすらしていないのだが。 「何かあった?」 そう問うても、答えはないまま時間だけが過ぎていく。 「和緋」 ゆっくりと、できるだけ優しく声をかければ、彼は腕を離し一歩だけ下がった。 俺もゆっくりと振り返り彼を見るが、その顔にいつもの色がないのは明らか。 今にも倒れそうだけど… そして彼はポツリと呟いた。 「僕は輝雅が一番なんだ」 「うん」 思い出される数年前の記憶。 確か俺も同じだったな。 そんなことを考えながら和緋の言葉を待つ。 「僕は…」 「親父さんと何かあったのか?」 彼は日本から戻ったばかりだった。 このタイミングだ。 もはやこれしか考えられないだろう。 その顔はまるで拗ねた子供のよう。 「僕は結婚なんかしないよ」 告げられたその言葉に、なぜか俺は何も感じることはなかった。 その理由を俺はわかっていたから。
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