第‐1章 過去

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第‐1章 過去

 「はぁ…」  月曜日。ため息をつきながら学校へ続く坂を上がる。昨日まで優しく包んでいてくれた布団につらい別れを告げ、年明けの寒さに震える。風は冷たく、分厚いタイツもあまり意味をなさない。服のすき間は、心の中にもすき間風を呼び込むらしい。眠いし。寒いし。つらいし。坂はしんどい。勉強はわからない。なんのために学校に行っているのかもよくわからない。今日も早く帰りたい。入学の熱に浮かされて、部活動に入らなかったのは本当に正解だった。  そんなことを考えていても足は勝手に前に進む。勝手に進んでくれているのか、勝手に進みやがってと思うのかは人によると思う。私は、自分の心のままに進んでいると家に帰ってしまう恐れがあるので、とりあえずはありがたいと思っておきたい。小心者なのだ。根っからの。Twitterは見るだけがいい。日常を文章で人に公開するなんて考えられない。話題になっているTweetを見るのは楽しいから好きだけど。Instagramも見るだけがいい。日常や思い出だけならまだしも、自分の顔を世界にむけて積極的に公開しているのを見ると、本当に住む世界が違うんだなぁと思う。幼馴染のみよちゃんがやっていて、フォローしてね!といい笑顔で言われたので入れてはみたけど。30メートルと離れていない家のはずなのに、こんなに住む世界が違うんだなと思ったことを覚えている。物理的な距離と生活する次元には、きっと相関関係なんてないんだ。  結局、インスタは適当な写真を2,3枚投稿したきり放置している。
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