第‐1章 過去

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「ん、うぅ……」  授業終わりのチャイム、先生が出ていったことを確認して大きく伸びる。肩が凝った… 一日が終わるといつもこうだ。精神的な苦痛と一緒に肉体的な苦痛も付いてくる。もうちょっとこう、何とかならないものか。  そんなことを考えながら帰り支度をする。自然と手は動き、ポイポイと持って帰るのに必要最小限度のものをカバンに詰め込んでくれる。親に怒られない程度にカバンが膨らんで見える程度の教科書と、筆箱とノートと。どうせ家で教科書を開くことなんてないのだけど。さて、帰るか。学校に来てから一番軽い気持ちで、か弱い乙女には少し重たいカバンを持つ。 「おい、山下」  唐突に声を掛けられる。声をかけられたほうを向くと、いつもと変わらぬ無表情。いや、いつもより無表情。短髪の、現代的な野球部って感じのサッカー部員が立っている。 「どうしたの、田村君」  不愛想にならないように、相手に不快感を与えないように少しの笑顔を添えて。私の知っている唯一の処世術だ。 「これ」  表情を変化させず、茶色い封筒を差し出してくる。 「なにこれ。ラブレター?」     
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