第‐1章 過去

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 そして帰りの速度を加速してくれる下り坂を頼りに、授業につかれた重たい足を運んで家に帰り、日がな一日ごろごろしている母さんにただいまといい、制服の片づけとかそんなのはそのままにして、ベッドに倒れこむ。私が母さんだったら家事は少なくともしてないなー、勉強ってことにして子どもにやらせるなー、テストなんて平均点でいいからさー、なんて思いながら携帯をいじり、ごろごろしているうちに日は落ち、今日も無駄に一日が終わった。何事もない平穏な日常。素晴らしい。ずっとこのままがいい。  晩御飯を食べ風呂に入り、リビングでテレビを見ながらぼんやりとしていると、ふと茶色の封筒のことを思い出した。昔貸したっきりの100円に利子つけて1000円にでもなったかな、なんて思いながら自分の部屋に戻り、クリアファイルから封筒を取り出す。  中には、なんだろう。白い紙が一枚、ていねいに折りたたまれてはいっているきり。開いた先に、見覚えのある字で書いてあったのはたった一文。  「お前、俺のこと好き?」
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