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息ができない。
首を締めあげる指を振りほどこうと、僕はもがいた。
ほの暗い水の中では、やつの顔がはっきりと見えない。
このまま死んでしまうのだろうか。
守ると誓った彼女を守れないまま、冷たい水に沈められるのだろうか。
酸素の回らない頭で視線を水面に向けると、真っ赤な尾ひれが頭上で動いた。
僕は血に濡れたこの水槽から、彼女を救い出したかっただけだ。
赤い尾ひれを揺らし水中を漂う彼女を、人間にしてあげたかった。
それだけなのに、どうして僕が殺されなくてはならないのだ。
ただ、誰にも迷惑をかけたくなかった。
誰かを守りたかった。
相反する思いを抱えて彼女と出会った時から、僕の運命は狂い始めていた。
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