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白いざらついたタイルが張り巡らされた床は、少しぬめっていた。
歩いているとたまに足を取られそうになる。
プールは涼しげな水色で、澄んだ水が張られていた。
その周囲には、大人が寝そべることのできる三台の白い椅子。
天井は高く、小さな声でも響いて聞こえる。
ベンチの向こうは一面ガラス張りの窓になっていて、そこから裏庭が見えた。
なんだか、リゾートホテルの室内プールに迷い込んだみたいだ。
足元を気にしつつプールに近づいていくと、魚が跳ねるような音がした。
まさか、本当に魚でも飼っているのだろうか。
それとも、噴水の水がたまたまそういう音を出しただけか。
確認しようと噴水の裏手に回ると、視界の端で何か赤い影が動いた。
心拍数が上がり、足元から冷たいものがこみあげてくる。
こわごわと目を凝らすと、仰向けに浮かぶ人が見えた。
しかも、赤いワンピースを着た女性だ。
「……あの、プール掃除をするのであがってもらえますか?」
声をかけるが返事はない。
女性は噴水の水を浴びながら、ゆらゆら水に浮かんでいる。
顔はよく見えないが目は閉じているようだ。
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