1章・人魚の住まう屋敷

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白いざらついたタイルが張り巡らされた床は、少しぬめっていた。 歩いているとたまに足を取られそうになる。 プールは涼しげな水色で、澄んだ水が張られていた。 その周囲には、大人が寝そべることのできる三台の白い椅子。 天井は高く、小さな声でも響いて聞こえる。 ベンチの向こうは一面ガラス張りの窓になっていて、そこから裏庭が見えた。 なんだか、リゾートホテルの室内プールに迷い込んだみたいだ。 足元を気にしつつプールに近づいていくと、魚が跳ねるような音がした。 まさか、本当に魚でも飼っているのだろうか。 それとも、噴水の水がたまたまそういう音を出しただけか。 確認しようと噴水の裏手に回ると、視界の端で何か赤い影が動いた。 心拍数が上がり、足元から冷たいものがこみあげてくる。 こわごわと目を凝らすと、仰向けに浮かぶ人が見えた。 しかも、赤いワンピースを着た女性だ。 「……あの、プール掃除をするのであがってもらえますか?」 声をかけるが返事はない。 女性は噴水の水を浴びながら、ゆらゆら水に浮かんでいる。 顔はよく見えないが目は閉じているようだ。
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