1章・人魚の住まう屋敷

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長い黒髪が水面で放射状に広がり、薄い羽衣のような赤いワンピースの裾が漂い揺れている。 裾は長く足先が少し出ているだけだ。 ワンピースから伸びる手は長く、肌はプールの色が映りこんでいるのか青白い。 彼女の姿は何かを思い出す――そうだ、子供のころ母にもらった絵本に出てきた人魚だ。 きっと彼女が人魚の正体だろう。 「すみません、聞こえますか?」 再度呼びかけるが、やはり反応は返ってこない。 もしや、死んでいるのだろうか。 古びた屋敷と女性の死体なんて、どんなB級ホラー映画だ。 いや、そんな物騒なことを考えている余裕はない。 溺れているのだろうか。 少し迷ったが、このまま見殺しにすることもできずにプールに飛び込んだ。 指先から綺麗に着水し、水中に潜っていく。 予想以上にプールは深かった。 どこまでも沈んでいく体に、僕はパニックに陥る。 慌てて手足をばたつかせ、ようやく水面から顔を出すが、水を飲み込んでしまった。 苦しい上に、服を着たまま飛び込んだせいで体が思うように動かない。
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