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私が恐怖におののいたのはいうまでもありません。霧の満ちるこの静かな世界で悲鳴すらあげてしまいそうになります。
私は逃げようとしますが彼女はしっかりと、でもどこか華奢な感じをにおわせるように私の腕を掴みます。
もし私が、「あの時」を経験していなければ、私は彼女の手を強引に振り払って、逃げ出していたでしょう。
私はなんとか理性を保って、その場に踏みとどまりました。
彼女は、私が少し落ち着いたのを確認すると、いつの間に持っていたのか、西洋風の綺麗な手鏡を私に手渡すのです。
彼女はコクリとうなづいてそれを見ることを促します。そんな彼女からは、少し哀愁の漂っているのを感じます。
鏡を渡されて最初することといえば決まっているので、私は何気なく鏡に自分というものを映すのです。
、、、映したはずでした。
私はその場に凍りつきました。
激しい恐怖が私の中を駆け回ります。
私も彼女と同じでした。
顔のないのっぺらぼうだったのです。
私の理性は、どこかへ吹き飛んで行きました。
わた錯乱状態となり、どん底からの悲鳴を上げ続けます。
この世界の果てしない沈黙に、私の悲鳴が果てしなく響いていきます。
涙が頬を伝うのが感じられました。
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