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「あの場所」へと行く方法というのはあらかたの察しがついておりました。わたしは随分と長い間この霧の中をさまよっておりましたが、その時を迎えるまでは一度だって景色が変わったのを見たことがありませんでした。 よって「その時」わたしが「あの場所」へと来れたのは単にたどり着いたというわけではないのです。きっと。 わたしは歩き始めました。地面からなる水音が辺りへと響いていきます。霧がなぜか重みを持ったもののように感じられます。 その時に起こったことは脳裏に深く刻まれていました。その時に植え付けられたトラウマからは、まだ抜け出せていないはずです。多分呼ばれているのだと思います。そしてわたしはその呼びかけを無視できなかった。またはわたしが無意識のうちに呼びかけていたのかもしれません。 どれくらい歩いたでしょうか。漂う霧の隙間から垣間見えたのは陸の終わりでした。その向こう、和風の橋が一つかけられそうな距離に、ぼんやりとまた別の陸が見えます。 白い服を着た少女が一人、陸を隔てるように下に広がった暗闇を見続けています。「 あの場所」がとうとう姿を現したのでした。
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