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闇を渡り終えて、彼女は私の前に立ちました。
彼女は両手で顔を覆っています。いないいないばあ、とでもするのでしょうか。
体内に飼っている虫が背中の方まで這い上がってくるような心持ちがいたします。
彼女は私にこう訪ねるのです。
「幽霊って、、、どう思う?」
一つ、これだけは言えます。
彼女は幽霊ではない、と。
確証はありませんが、これだけは断言出来ます。
「怖いよ。すごく。呪い殺されそうというか、、、。」
「私はそうは思わない。」
彼女は続けます。
「幽霊は、、、死んだ人。ただそれだけ。
それに呪いとか、、、恐怖とかいうオプションをつけたのは、、、わたしたち人間。
夜に現れるっていうけど、、、嘘。昼もいる。人間は幽霊を幽霊たらしめるために、、、昼は:敢て見ない:、夜の恐怖を無理やり押し付けられて、、、かわいそう。」
微風が吹いて彼女の艶やかな黒髪が揺れます。
初めて、彼女のいう意味が少しだけわかったような気がします。
「人間は、、、元の同じ:世界:から、、、
それぞれ違う:世界:を見ている。
みんな無意識に、、、:世界:を捻じ曲げてる。都合よく、あるいは卑屈に、、、。」
彼女は顔を覆っていた手をゆっくりと下に降ろします。体内に巣食っていた虫が脳を貫通していきました。
彼女には、「顔」がありませんでした。
「私の顔、、、あなたには、、、どう見える?」
のっぺらぼうの彼女はそう私に尋ねました。
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