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その日の夜、俺は家族にばれないようにこっそりと家を出ると、自転車で商店街に向かった。
とりあえず、行ったという事実だけあればいいと思った。
死体を入れた麻袋の大男なんているわけないし、誰かが田辺の姿を見間違えただけだろうと。
商店街に着くと、店のシャッターはすべて閉まっていた。
当然だ。
時計はもう22時を超えている。
人だって歩いていなかった。
俺はスマホで自撮りして、来たという証拠を残した。
そして、自転車を押しながら、ゆっくりと商店街の中を歩いた。
自転車の車輪の音が大きく聞こえるほど、誰もいない商店街は静かだった。
しばらく歩いていると、前方から足音が聞こえてきて、俺の心臓の鼓動がわずかに早まった。
だが、商店街の向こうから現れたのは、派手で丈の短いワンピースを着た若い女性だった。
足音は、その人が履いているハイヒールのようだった。
近づいてくるワンピースの女性。
俺と目が合うなり、怪訝な顔をした。
俺は気まずくなり、下を向きながらワンピースの女性とすれ違った。
女性の肩には高そうなバッグと、腕にはブレスレット、指にはルビーの指輪をしているのが見えた
結局、それから商店街の出口までに見かけたのは、暗闇で目を光らせた猫だけだった。
俺は最後にまた証拠のために、商店街の出口で自撮りした、
「まぁ、こんなもんだろう」
と鼻で笑い、自転車に乗って帰ったのだった。
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