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その時だった。
どこからか、ズリズリと地面を引きずるような音が聞こえて来た。
商店街の入り口が遠くに見え、駅前の明かりがかすかに見えるが、アーケード内は薄暗く誰もいない。
商店街の出口の方へ振り向いた時、自転車の向こう側に汚れた長靴と作業着が見えた。
俺は息を飲んだ。
引きずっていたのは、今にも破れそうなほど古く、赤黒くいシミと土砂で汚れた大きな麻袋だった。
赤黒いシミはグジュグジュと乾いておらず、麻袋の中から染み出しているように見えた。
こいつが噂の大男か。
噂では、中には死体が入っている。
俺の心臓が、強く大きく鼓動していた。
ゆっくりと視点を下から上に流していくと、作業着には血がこびり付き、筋肉隆々の腕は赤黒い土砂で汚れていた。
かなりの大男でガタイもいい。
もしも噂が本当なら、かなりの危険人物だと思った。
だが、大男の横顔を見た時、やはりその顔は肉屋の田辺のようだった。
すると、大男は歩みを止めて俺の方を向いた。
俺は心臓が止まるかと思った。
だが、大男の行動は予期せぬものだった。
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