0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれ、あれ?」
そういえば僕はなぜ、こんな所に一人でいるんだろう。どこからやってきたのだろう。さっきの日本という言葉、それは地名か何かだろうか?
そんな事をとりとめも無く考えていると、周囲でガサゴソという物音が聞こえる。
「誰だ!」
サバンナに生い茂った丈の長い草が揺れている。何かいるのだろうか?
「おい、なんだ、何かいるのか!」
語気を強めて言う。何だかとても不安になってきた。独りぼっちは不安だけれど、訳の分からない何かと二人というのはもっと不安だ。おまけに自分が何をやっているのかも分からないのに、どうすればいいんだ。何か武器になるものは無いか? 視線を彷徨わせる。その時、さっきの草原が動いた。
「ガオー」
「うわー、たっ食べないでー」
僕は自分でも信じられないくらい情けない声を出して後ろに倒れた。何かが僕の体の上に覆い被さっている。
「ガオー」
生暖かい息が顔にかかる。すぐ目の前に動物がいるのだ。僕は恐怖に固まったまま動けなかった。今すぐ食べられるに違いない、そう思ったけれど、その動物は僕の喉元にすぐに噛みついてくることは無くそのままジッとしている。僕はギュッと閉じた目を恐る恐る開けた。
最初のコメントを投稿しよう!