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新世界
1
小鳥の声が聞こえる。
草木が鼻をくすぐる。
目を開けると小麦色と青色。
大地と空だ。
遠くに一本の木が見える。
頭を起こして起き上がった。
「ここはどこだろう?」
呟いた自分の声にこたえるものは何も無く、ただ遠くから旅してきた風が僕の体の横をすり抜けていっただけだった。
「おーい、誰かいませんかー」
誰にでも当てもなく呼びかける。ぼくの言葉はどこにも響かずに、ただ青い空に吸い込まれて消えていった。
本当に何も無かった。ただただ広がるサバンナの草原。ただひとつ目印になりそうな木が一本だけわびしげに立っている。おまえもひとりぼっちかい? そんな無意識の共感が働いたのか、自然と僕の足はその木を目指して歩き出した。
木の側までやって来ると、その木は思った以上に小さくて痩せていた。葉っぱも申し訳程度と何とも寂しい様子で、その葉っぱも青々とした色とはほど遠く、どうやら季節は日本でいうところの秋頃を思わせた。
「日本?」
日本って何だっけ? 自分の呟いた言葉がなんなのかいまいち思い出せない。急に頭がぼんやりして、さっきまで当たり前と思えたイメージがスッと霧の中に消えていったように何も思い出せない。
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