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天井に空いたままの空間の穴から禍々しいオーラが垂れ流されてくる。
「舐めた真似を」
アリアが穴からぴょんと飛び降りる。怒りで抑えられないらしい強すぎる彼女のエネルギーは、少し体に触れただけでも全身に鳥肌が立つほどだった。気後れはしたがアリアに思ったことを言う。
「彼は自分から襲うつもりはなく、ただ逃げたいだけみたいだけど、まだ追うのかい?」
ギロリとアリアに睨まれ、一瞬息が止まった。
「何が起こっているのか分からない状況なのよ。少しでも情報が欲しいわ。ここに隠れてたんなら何か知ってるでしょう」
「それは分かるけど……正直俺は紅葉の安否を早く知りたい」
アリアが逡巡し、どこからか懐中時計を取り出して眺める。
「十分……いえ、五分でいいわ。それで捕まえられなかったら紅葉を優先するから」
「分かった」
俺が言い終わるより先にアリアは姿を消していた。
ゾワッとした感覚が体を通り過ぎる。どんなに上手に隠れている奴でも見つけ出せる、極めて強い探知魔法だ。数秒後、普通に生きていたらそうそう聞かないような破壊音がしたのでそちらへと向かう。
自動販売機のあるちょっとした休憩スペースがあった。その真ん中で少年は倒れていて、少し離れた所にアリアが仁王立ちしている。少し近づくだけで体が重くなる。その場所だけ重力が強くなっていて、少年を押し潰しているのだろう。さすがにもう逃げられないだろうと思っていたら、急にアリアが崩れ落ち少年が身体を起こす。
アリアが自分の足元にエネルギーを叩き込み、床を爆裂させた。衝撃を使って俺の後方まで退いたアリアは珍しく困惑しているようだった。
色んなものが舞い散って霞む視界の先に、ゆっくりと立ち上がる少年が見える。直ぐ逃げる訳でもなく、じっとこちらを見ながらゆっくりと後ずさりをしている。
「あいつ、私の魔法をコピーしてる。分からないけど精霊の能力もコピーできると思っておいた方がいいわね」
「みたいだね……でも何度も使える訳ではなさそうだし、ちょっと試してみるよ」
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