妻の仮面は、まるで素顔のように張り付いて。

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妻の仮面は、まるで素顔のように張り付いて。

 ダイニングに入ると、4人分の食事が用意されていた。今日は、アジの開き、ほうれん草の和え物、みそ汁、冷ややっこ、ご飯。娘は、その献立を見て、魚が入っていることで、骨を取るのがめんどくさいと文句を言う。 「えー。お魚やだー」 「はなちゃん、食べないとおっきくなれないよ」 と私は言った。娘はうーん、うーんとうなっていたが、その時、3歳になる息子が来て、 「こーちゃんはお魚食べれるよね?」 と妻が聞くと、こくりと頷いた。 「ほら、こーちゃんは食べるって言ってるよ。おねーちゃんだから、食べれるよね?」 と妻が聞くと娘もしぶしぶ頷いた。私はうまいものだと思って見ていると妻がこちらに目配せをしてくる。私は緊張が高まり、ついつい力が入る。さすがに、あなたも手伝ってと言われていることぐらいは分かったので、首を下に振った。ただし、私は、気の重さが胃まで重くしてしまっていて、食欲がなかったが、彼らの前で残すわけにはいかないと腹に決めて、その献立を掻き込むと決めた。     
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