妻の仮面は、まるで素顔のように張り付いて。

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 妻はてきぱきと子供たちに、食事をさせて、片づけをしている。私は、テレビをみているふりをして妻の姿をちらちらとうかがっていた。妻は、いつものように、まるで、何事も無いように振舞っていて、浮気をしているそんな気配はどこにも感じさせない。私も、先日、テーブルの上に置きっぱなしにされていた携帯が鳴って、私の知らない人間の男性の名前がなかったら、きっと気が付きもしなかっただろうと思う。それだけ、妻の仮面は完ぺきだった。  私が、テレビを見る振りをしながら、妻のほうをちらちらと見ていると、 「あなた、こーちゃんのお風呂入れてきて」 と妻が言った。私は、体が強張って、テーブルの上にあったリモコンを落としてしまった。私は、テレビに表示されている時間を見て 「ああ、もうこんな時間か。そうだな、わかった」 と言って湯沸かし器のボタンを押しに行った。私は、お風呂の準備をして、再び、ダイニングに戻ってくると、妻は、洗い物を終わらせて、ダイニングに座って、テレビを見ていた。すると、妻は、 「あの、さっき藤川浩平の隣にいた女の人ってだれだっけ?」 と聞かれた。私は、テレビの内容なんてこれっぽっちも頭に残っていなかったので、 「ああ?ええ?誰?あんまり見んからわからんな」 と言った。妻は 「さっき、テロップで表示されてたんじゃないの?」 と言った。私はテレビを見た。確かに、それぞれのコメンテイターの机にテロップが置かれていた。ただ、私は、その番組の内容はそのあともこれっぽっちも覚えていない。
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