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仮面は流れ落ちた。水鏡は私の素顔をさらけ出す。
息子をお風呂に入れた後は、私一人で湯に浸かっていた。私の頭の中には、妻の浮気のことしかなかった。つまりは、いつ、どうやって、で妻にその話を切り出せばいいのか。そして、今後どうすればいいのかということであった。
私の思いとしては、できれば、いや、絶対に子供たちに聞かれたくない。そういう思いはあった。そして、妻と私が2人きりになった時だ。でも、どうやってききだそうか、と考えれば、もはや、直接問い詰めるしかないと私の中で結論が出ていた。あれだけ、完璧に私に浮気を悟らせなかった妻だ。中途半端なやり方では通用しない。
だが、本当の問題は今後はどうすれば、いいのかという点だ。最悪、離婚ということもある。そうなった場合、まず気がかりなのは子供たちだ。親権という問題がある上、まだそういうことが分かる年頃でもない。ほかにも、私たちの事を祝ってくれた私の上司や恩師、その上、両親ににどう顔向けすればいいのだろうと考える。それに、会社での私の評判だってある。妻に、奥さんに逃げられた人なんて不名誉な称号は絶対に欲しくなかった。陰で囁かれ、哂われ、私にはとても耐えられない。
ならば、このまま黙っているべきか。黙っていれば、離婚もあの妻の様子ならばないだろう。だが、常に浮気しているんじゃないかと疑わざるを負えない。どうすればいい……。
風呂がぬるくなるまで浸かっても、煮詰まることはなかった。私は寒くなった風呂を出て洗面所の扉を開ける。冷気が流れ込んできている。今夜はきっと冷えることだろう。
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