多分どこかにいる僕の、何気ない独白

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多分どこかにいる僕の、何気ない独白

 あなたは、今どこにいますか?  答えは帰ってこない。それでいい。もう、僕らはずっと離れたところで名前も知らないままに生きているのだから。  あなたの物語に、もう僕はいないでしょう。その昔、若き日の一ページを飾る背景の一画。そんなところだろうか。それなら、その方がいいだろうか。少しの意味と、ちょっとした甘味酸味を含んだ一幕のスパイスになれるなら、それもいい。  今、あなたは笑っているでしょうか。それとも泣いているでしょうか。もう確かめる術もないけれど、僕は今でもそれが少しだけ、心に引っかかっています。あなたにとって、僕は、何だったのでしょうか。少し聞いてみたい気もするけど、反転した問いに僕が答えを持たない以上、きっと同じようなことなのでしょう。  11歳の僕は、自分勝手に手を振り上げました。  16歳の僕は、自分自身に怯えて逃げ出しました。  それでも、それでもあなたは、僕の声を聞いてくれました。  認めるでもなく、分かり合うでもなく、お互いの伝えたいことを投げつけあったあの日を、それがどれだけ幸せだったことか、僕はよく覚えています。いつだって思い出せるあの日々を、名前の無かった僕らを、僕はまだ大事に心の片隅に取っておいてあります。  自分が生きていてもいい理由を見失った時、この世の全てが汚く見えてしまった時、誰かれ構わず憎んでしまいたくなった時、そっと取り出せるように。
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