3.それは通常対応です

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北条達のいた部屋は、その割烹の中でも、お得意さまをお連れする用の高級なお部屋だった。 畳のその部屋の奥に座っていたのは歳の頃は、北条より少し歳上くらいの男性。 その人はネクタイも緩めず、日本酒に口をつけていた。 少し長めの前髪をオールバックにあげていて、整った端正な顔立ちをしている。 急に入ってきた、二人に驚いたようだった。 「蓮根先生!なんと、高槻さんですよ!研修があって本社に来ていたようで、偶然飲んでいたところを捕獲してきました。」 捕獲て…。 ん? 蓮根先生?!はぁ?あの人じゃん! 結衣の頭の中で情報がいろいろと繋がる。 先生、と呼ばれるその職業。本社の営業と直の顔見知り。 そして、先日、結衣が直に対応していて、名前はその名前。 え?!え?!えーーーーっっ?! 「え…。」 ちょ…ちょっと、無理無理無理ーっ。 なんでこの人は、いつも心の準備のない時に……。 北条の期待に満ち溢れた表情を見て、逃げられない…と結衣は察する。 ふっと息をついて、結衣は腹をくくり、お仕事用の声を出す。 「お世話になります。高槻結衣です。先日は失礼いたしました。」 「あ、こちらこそ。」 やばっ!この声だ。 下げていた頭をふとあげると、冷たく整っていた表情が柔らかく微笑んで、結衣を見ている。 印象悪くないのは本当のようだ。 それを見て、結衣は少し安心する。     
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