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「先日の対応の件で、蓮根先生は高槻さんにすごく感謝されてて。対応良かったって。
蓮根先生、彼女はもともと、査定にいた人で僕もお世話になっていた人でした。この人の対応なら納得です。」
2人を引き合せると、ちょっと、あっちの査定の方に少しお話しがあるので、と北条は行っていってしまう。
おいーー。重要客先…放置なの…?
結衣はその場に残されてしまった。
困った様子の結衣を見て、蓮根がふっと、笑う。
「高槻さん…?」
「はい!」
「一杯だけ、如何ですか?」
「お願いします。」
メタルフレームのメガネはその白皙、とも言う顔にぴったりで、冷たそうな雰囲気にも見えるのに、先程から結衣を見る目だけが…むしろ、熱心?
結衣はばくばく言う心臓の音を抑えるようにして、お店のご主人に、お猪口をもらいに行く。
受け取ったら、もう、仕方ない。
蓮根の席の机の角を挟んだ隣に座った。
「緊張していますね?」
「はい…。コールセンターって、お客様と直接お会いすることはないですから、ちょっと…。すみません。」
「どうして謝るんです?」
なんとなく…。
つい、緊張してしまって、上手く話せる自信はないし、やはり、自分は裏方なのだ、と思っている、からなのだが。
「裏方なのに、こんなご挨拶…。あ、その後いかがですか?」
「大丈夫です。修理に時間はかかるみたいですけど。その間もあなたのおかげで、快適にすごせそうですし。」
やっぱり、少しかすれ気味の低くて甘い声。
声って、こんなに破壊力あるんだ。
意識していなくても、ぎゅっと胸がしめつけられそうだ。
「よかったです。」
「事故をしたのは、初めてだったので、いろいろ無茶も言ってしまった。先程、北条さんにも呆れられました。今後は、そういうことはしません。」
「いえ。私も勉強になりましたし、いろんな方に今回は助けていただいて。」
「助けて…?」
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