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「北条さんは本社の女の子達に囲まれて、楽しくやっているんでしょうか。呼んできていただいて、いいですか?」
「はい…。」
こくっと、結衣は頷く。
それを見て、蓮根は目を細めた。
な…なにが起こった…の…?
部屋を出て、みんなのところに帰る途中、急に動悸が激しくなる結衣だ。
『ね?』ってなにが?ほっぺた、撫でられた。
き…危険すぎるでしょ!ダメでしょ!!
ダダ漏れの色気と、深い声で、聞いているだけでなにも考えずに頷いてしまう。
すごいなー。しかし、怖いなー。
「結衣ちゃん?大丈夫?」
「うん。平気。ホテル近いし。」
食事が終わり、気をつけて帰りなよーとか、また、こっち来るときは連絡してねーという声を聞いて、またねーと手を振って、結衣はホテルに向かって歩き始めた。
携帯を手に取る。
着信には番号が表示されていた。
蓮根に連絡はしないつもりだ。
そんな連絡など、できるはずもない。
ところが、急に手元の携帯が着信を知らせて、ぷるるっとなり、わああっ!と驚いた結衣は、思わず反射で出てしまった。
『今、終わったんですよね?』
携帯から聞こえてくるのは、もちろん蓮根の声だ。
怖い、怖い、どっかで見てんの?
つい、その場でキョロキョロしてしまう、結衣である。
『先程のお店のオーナーさんに、終わったらご連絡いただくようお願いしていたんですよ。』
くすくす聞こえる笑い声。
「あ…のっ。」
『高槻さん、ぜひ会ってほしい。聞いてほしいことがあるんです。』
また……だ。
その、とても真摯な声と逆らい難い、響きに、
「どうすればいいんですか?」
と結衣は答えてしまう。
『宿泊先のホテルの少し手前にバーがあるんです。そこにいます。』
今、結衣がいるところから歩いて5分くらいのところだ。
そんなところにいるのでは仕方ない。
それに聞いてほしいこと、の中身も気になる。
「分かりました。」
そう返事して、結衣はその店に向かった。
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