7522人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
「なにか…って。」
「この際、約款を読み上げるのでも構わないから。」
この際…?!約款?
結衣は自分が、第一条、一項…とか読み上げているところを想像して、ないわ!と否定する。
「あの時、あなたの声を聞いて、本当に安心したんです。大丈夫ですか?とあんな風に聞いてくださる方はどんな方なんだろうか、と思っていました。」
う…ん、しつこいようだけど、それは通常対応なんですけどね。
それと、約款を読み上げろ、とかは…。
なんか、言ってること、おかしくないですか?!
「あなたの透明感があって、羽根がふわりと着地するような柔らかい声。僕の苦手な軋みが全くなくて、優しいあなたの人柄を表すような…。」
あ…れ…?
「蓮根さん、声が聞きたいんですか?」
「はい。もっと、話してください。」
話しづらいわ!
「あなたの声を聞いて、ステキな声だと思っていました。だから、普段、代理店研修など出ないんですけど、この度来てみたら、まさか、偶然あなたにお会い出来るなんて。」
「そういえば、他の階でやってましたね。代理店研修。」
比較的たくさん開催されるので、意識していなかったけれども。
「営業の北条さんが待ち構えていて、面倒だと思いましたけど、その先の店にあなたがいたから。運命かと思いました。」
気のせいだろうか…甘い、と思っていた表情が少し怖い…。
危ない人なんだろうか。
「蓮根先生…」
最初のコメントを投稿しよう!