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4.マウント、噛み噛み
そのバーは店内は少し落ち着いた感じで、店内のライティングも落ち着いた雰囲気の店だった。
カウンターで、一人で蓮根がグラスを傾けているその雰囲気は、壊したくないような感じだ。
入口が開いた気配で、蓮根が顔を上げた。
また、ふわりと笑う。
「高槻さん。来てくれたんですね。」
「はい。近くでしたし。気になって…。」
「やはり、あなたは優しい。」
何を飲みますか?と聞かれる。
「オレンジブロッサムをください。」
それはジンとオレンジジュースのカクテルで、さっぱりした口当りが結衣は好きなのだ。
「いいお店ですね。」
「そうなんです。音楽も大きくないし、ここで会話される方は結構落ち着いているので、静かに話をするならここだと思って。ご宿泊先にも近かったし。」
横並びのカウンター席は、先ほどの店よりも距離が近く、声も近い。
その分、結衣の動悸の激しさは増しているのだが、なんとかそれを押さえつけて会話を続ける。
動揺するようなことがあっても、会話を続ける、のもこの仕事で学んだ技術の一つだ。
仕事モードにしないと、と言い聞かせる。
「高槻さん…」
「はい。」
「なにか、話してください。」
とても、甘い表情で見つめられてそんなことを言われる。
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