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5.ウニ鍋とシフォンケーキ
「おはようございます!」
キャスターを引いて、ホテルのロビーに降りると、ロビーで新聞を広げていたその人が、爽やかに微笑んで、立ち上がると、結衣の方にやって来る。
ロビーで一際目立つ、その姿。
立ち上がると、スタイルの良さが、またさらに存在感を煽る。
品のあるざっくりとしたニットと、パンツの組み合わせは、シンプル故に、着る人のセンスを問われる姿だ。
私服、素敵ですね…。
てか、どうしてここにいるのかなぁ?
「おはようございます。蓮根先生。」
「今日も素敵ですね、結衣さん。」
声が?
笑顔も引き攣りそうだ。
「ありがとうございます。」
いえいえ、こちらは支店の重要顧客。
わたくし如きが、怒らせてはいけない相手ですよー。
「蓮根先生、どうされたんですか?」
「今日はご予定は?」
「少し、銀ブラでもしてから、帰ります。」
「ご一緒しましょう。」
「そんな、お忙しい先生のお時間をいただく訳には…。」
「奥ゆかしい人ですね、あなたは。」
ほんっとに、囁くの、やめてもらっていいですか!!
「大丈夫ですから。」
「僕のことは気にしなくていいんですよ。そうだ、せっかくだから、お昼をご一緒しましょう。銀座ならいいお店があります。」
聞いてないのかな。
結衣はすうっと息を吐く。
「蓮根先生…。本当に、お気遣い嬉しいんですけど、そんな事をして頂いたら、会社に怒られてしまいます。お気持ちだけで、充分です。」
少し、俯き加減におしとやかに言ってみる。
NOと言わずに、断る!
しかも、お仕事モード全開だ。
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