チョコレート組曲第13番

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13日の金曜日に、ベルギー旅行から帰ってきた白鳥さんが、「河村さんには絶対、今日渡したかったんです! 他の営業マンたちは明日なんですよ」と嬉しそうにオレにラッピングされた小さな箱を渡したのだが、「夜の12時になったら開けてください」と言うのでオレは帰宅せずに残業をひたすら続けている、いやオレだけだよ? オレだけ13日の金曜日に愛の証を渡すなんて白鳥さん、それは「チョコレート組曲第13番 ハクチョウの求愛」だろう! オレが箱を開けたら瞬時に彼女はこの営業一課に現れそしてオレに抱擁を求めてくるのだ、それまで彼女はこの会社のどこかに隠れている、オレの予想では、白鳥さんはサプライズを用意している、そして警備員室のモニターの前でポテチを食いながらオレを見ている、だとしたらもっとシャキッとしなければ! 実際眠い、帰りてぇ、でも彼女が待っているんだからここは王子としての品格をモニター越しに見せつけなければならない、この課には監視モニターがついていないけど、そういう気持ちでね、だから自主的に残業しているわけ、ちょうどいいのだ、田宮に西崎、岡江、水野、横宮、藤川、あいつらが月末までに終わらせている仕事が、オレは終わらない、それはオレが白鳥さんに手を差し伸べるように優しく仕事をしているからだ、エクセル関数が正しく適用されたシートを使って試算表を作ってもだよ、数字打ち込むのは人間なのだよ全人類よ、その数字が間違ったら全部間違うの、だからオレは誰よりも丁寧にパソコンのキーボードを押しているんだよ、なのに部長はオレの仕事ぶりを評価しないので白鳥さんがコーヒー飲みながら「ほんとあの人超めんどくない?」なんて誤解するんだ、まあオレがちゃんと説明しておいたけど、真実のオレはすげぇシャイ、シャイニーボーイだからまあいずれ転職してやる、そのときは白鳥さんもヘッドハンティング決定、あっまた合計数エラーとか出やがった、なんだよパソコンよりオレのほうが偉いのに、白鳥さんのほうがもっと偉い、ところで我が社の残業可能時間は21時までだったはず、あともう3分しかない、
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