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しかし白鳥さんが「残業届け」の欄に12時までと書いて出してくれているかも知れないからオレはこの3分を大事にしたい、3分という数字はカップラーメンとウルトラマンにおける哲学的数字である、あと3分あればオレは社内昇格試験に合格したと今でも思う、「3分」とは泳いでる魚だ、捕まえてもぬめぬめしているから手からすり抜けてしまうのさ、お、今のオレすげぇ詩人だ、白鳥さんが13日の金曜日にチョコレートくれたからこんな短時間にレベルアップしちゃったんだよオレは、あーうるさいな、やっぱり警備員来た、社内に残っているのはあんただけとか、なんだよ白鳥さん帰宅か、まあいい、でも白鳥さんいないんだったら12時前でも愛の小箱を開けていいと思う、後から12時に開けたって言えばいいもんね、はいはい帰りますよ、え? 社員通用口までついて行くだと? オレは子どもか? 一人で帰れるもん、情けねぇ、あ、警備員に自慢しよう、13日の金曜日にチョコもらったって、なんなら幸せのおすそ分けをしようではないか、オレはオレだけのために選ばれたベルギーのチョコレートを普段から不愛想な警備員に味わってもらおうとしている! なんという、なんという慈悲深さ! というわけで支度して警備員と仲良く通用口へ向かう、出口で最終退勤者の名前を書いた、オレは開ける、白鳥さんの愛を開封する、中には紙が入っていた、『12時前に開けやがったな ゲームオーバー』、その瞬間オレは足元から消え始めた、消えるとき警備員がオレを労わるように言った、「これが有名なダメ社員を葬る、『白鳥の裁き』か……。社長が悪魔と契約してからこんなんばっかりだ。や、色々バリエーションあってこっちも楽しいけど、あんた気の毒にな。別の世界ではきっとエリートサラリーマンになれるさ」、おれは帰宅もできず白鳥さんのいない世界に飛ばされるのかね、すごいリストラだと思います、もう顔まで消えていま
終
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