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「へぇ。そんなのあるんだ。良い匂いだな。な、もう一回嗅がせて」
「バカ!そんな事……」
咄嗟に首を隠した俺の幼馴染み。
腹が立って、その腕を抑えてわざと思いっきり匂いを吸い込んでやった。
「きゃっ」
強張る肩の、更に奥へと鼻を突っ込む。
「そんな良い匂いさせてる方が悪い」
「う、うるさい。バカ」
「本当、良い匂い。ずっと嗅いでたい」
肌に鼻をくっつけて、その甘い匂いを思い切り堪能する。
フレグランスと肌の匂いが混じった良い匂いが鼻の奥まで広がる。
小さな肩にそっと触れると、その肩が余計に縮こまるから可愛い。
「もう、いつまで嗅いでるのよ。離れてっ」
恥ずかしさに耐えきれず俺を押し離す幼馴染み。
真っ赤になって怒る彼女に、つい口が緩む。
「怒った顔も可愛いって」
「何よ、そんな事思ってないくせに!」
「バレたか」
「もうっ」
「痛てっ」
持ってたカバンで思い切り背中を叩かれた。
いつもの距離に、また戻る。
今更縮め方が分からない。
そんな良い匂い、他の男の前で漂わすなよ。
匂い嗅ぎたいなんて、誰にでも思うか、あほ。
好きな奴の匂いだからに決まってんだろ。
そろそろ俺の気持ち分かれ。
了
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