甘い匂い

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甘い匂い

「ん?あれ?何だ?この匂い」 スンスンと鼻を鳴らしながら空気に混じった香りを嗅ぎ分ける私の幼馴染み。 「甘い匂いがする……」 斜め上を仰ぎながら鼻をヒクヒクさせる。 「あ、分かった。チョコレートだ」 何の匂いか分かったくせに、まだ鼻を鳴らしている。 犬か。 「そう言えば、今日ってバレンタインだったよな。はい」 そう言って私に手を差し出す。 「え、何が?」 「何がって、そりゃあチョコレートに決まってんだろ。見たぞ。さっき友達にたくさん配ってただろ?」 訝しげに眉を寄せながら当たり前のように言ってくる。 「亮太、甘いの苦手じゃん」 「少しは克服した」 「克服って。別に無理してまで食べるものでもないでしょう?」 「良いから。くれ」 「もう。しょうがないな。はい。手作りなんだから味わって食べてよね」 「へいへい。どうせ友チョコの余りだろ」 「はは。まあそうだけどね」 ……本当は。 嘘。 今、彼に渡したのは、本命チョコ。 少しだけラッピングも可愛くした。 みんなに配ってた友チョコが、その余り。 告白する、勇気なんてない。 幼馴染みを十八年もやってると、今更告白なんて恥ずかしくて出来ない。
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