3人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
【怖い商店街の話】 古本屋の二階
夕暮れの帰り道、私は近所の商店街を歩いていた。
近頃、廃業した店が増えて、商店街の両脇にシャッターが目立つようになった。
それでも、長く続く飲食店はまだ存在し、美味しそうな匂いが漂ってくる。
総菜屋さんの前には、いつもお客さんが並んでいる。
店先に置いてある蒸し器からはモクモクと白い湯気が上り、私も匂いに釣られて、総菜屋さんに顔を向けたまま歩いていた。
ドンッ
よそ見をしていたせいで、私は誰かとぶつかってしまった。
「ごめんなさい」
とっさに謝ると、目の前には六歳ぐらいの小さな男の子が、私を見上げて立っていた。
男の子は短パン半袖の恰好で、ボロボロの靴を履いていた。
もう秋も終わりに差し掛かっているのに、とても寒そうなその格好に驚いた。
「どうしたの。ママとはぐれた?」
男の子は首を横に振った。
「そんな恰好をして、風邪をひくよ。お家に帰りな」
私は男の子にそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!