出会いはいつも王道的

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 カリン・アラモードがして見せた仕草は、本来、貴婦人と呼ばれる人々の行うものだった。  (かつ)ての忌み嫌われた存在だった魔女が真似ようものなら、人々の目には侮辱と映り、たちまち石を投げられた。  人々がドラゴン退治を魔女に頼るようになった時、ある魔女が皮肉を込めてそれをやった。  人々が彼女に石を投げる事はなかった。  それ以降、一度たりとも。  やがてある時、その可憐な仕草をして見せる彼女を、ある者がこう呼んだ。『魔法少女』と。  以来、彼女や他の魔女達は、魔法少女と呼ばれるようになった。  その可憐な仕草は、今やドラゴン退治を終えた魔法少女の象徴となっていた。 「ティコの奴め。給料未払いのままくたばりやがって!」  ニッカ・ポッカが今日七度目の愚痴をこぼした。  いや、八度目だったかも知れない。  しかしそれも仕方がない。  彼の師だった大占星術師ティコは、彼を散々こき使った挙句、ろくに給料も払わぬまま帰らぬ人となってしまったのだから。  彼は両脇にぶら下げた鞄の片方から水筒を取り出し喉を潤すと、もう片方の鞄から分厚い紙の包みを取り出した。 「オドレンシュタイン将軍はこいつにどれだけ値を付けてくれるかな?」  ニッカ・ポッカは思わずほくそ笑むと、包みを大切そうに鞄の中に戻した。     
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