出会いはいつも王道的

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 やがて両脇にぶら下げた鞄の片方から水筒を取り出すと、水を一口ゴクリと飲み込んだ。  漸く落ち着きを取り戻した男は、目の前のカリン・アラモードに向かって満面の笑みを浮かべた。 「いやあ、助かった。君は命の恩人だ。危うく野垂(のた)()にするところだった」  全く悪びれた様子もなくそう言ってのけた。 「知ったこっちゃないわよ! 勝手に野垂れ死んどけっつーの! それより私のパン返してよ!」 「そうしたいのは山々なのだが、生憎金がなくてな。暫く貸しにしてもらえぬか? 後で利子付けて返すから」 「ってか、あんた、パン買う金もないくせに、どうやって利子付けて返すつもりよ!」 「フッフッフ。それが金の当てならあるのだ。それも大金が入る当てがな。フッフッフ」  そう言うと男はもう片方の鞄から分厚い紙の包みを取り出した。 「つまりオドレンシュタイン将軍にそれを売り付けに行くってわけ?」 「その通り。何しろ将軍はティコの元スポンサー。故にこのティコ文書には興味津々のはずだ」  ニッカ・ポッカは大金が手に入る理由をこうカリン・アラモードに説明した。 「大占星術師ティコの噂は良く聞いてるわ。ティコに弟子がいた事までは知らなかったけど。えーと……」     
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