0人が本棚に入れています
本棚に追加
「そう。今の俺は一文無しなのだ。つまりオドレンシュタイン将軍にこのティコ文書を売りに行こうにも、その旅費がない」
「それはお気の毒。でも私の知ったこっちゃないわ」
「ところがカリン、そうとも言えないのだ」
「どういう事、ニッカ?」
「俺がこのティコ文書をオドレンシュタイン将軍に売りに行けなければ、君にパンの代金を利子を付けて返せない。つまり君にパンの代金を利子を付けて返す為には、是非とも旅費が必要なのだ」
「言われてみればそうね、ニッカ。どうしよう、困ったわ」
「だからこそカリン、君に旅のスポンサーになってもらいたいのだ」
「お断り」
「いや、だからカリン、何故そのように即断するのだ?」
「魔女の勘かしら。フフフ」
ニッカ・ポッカはこのような説得をあと何回か続けたのち、漸くカリン・アラモードの了承を取り付けた。
オドレンシュタイン将軍にティコ文書を売ったあかつきには、先程のパンの代金と二人分の旅費を利子を付けて返すという条件で。
「てか、カリン。文句を言うわけではないが、何故二人分の旅費を返さねばならないのだ?」
「そんなの簡単よ、ニッカ。あんたの分と私の分の二人分の旅費だから」
「へ?」
ニッカ・ポッカは素っ頓狂な声を上げた。
その声に通りを行く人々は一斉に視線を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!