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「ちょっとニッカ、変な声を出さないでよ! 周りにジロジロ見られちゃうじゃない!」
「おっと、これはすまん、カリン」
ひたすら恐縮するニッカ・ポッカの姿に溜息を吐くと、カリン・アラモードはゆっくりと説明を始めた。
「だいたい私があんたに旅費だけ渡して、一人で旅に行かせると思う? そのままとんずらされるかも知れないのに。当然私も付いて行くわ。だからその分の経費も含めてあんたに返してもらおうって話よ」
「なるほど、カリン。つまり俺は君に信用されてないって事か」
「ついさっき会ったばかりの人間を簡単に信用する程、魔女ってお人好しだと思う?」
「なるほど。言われてみれば確かに君の言う通りだ」
「分かってくれればそれでいいわ、ニッカ」
こうして二人の旅は始まった。ギルド軍の総司令官オドレンシュタイン将軍の元へ、ティコ文書を売りに行く旅が。
ギルド戦争。二十年前に始まった、ギルドと領主連合との間の戦争。
この二つの勢力は、それ以前より緊張関係にはあったが、長年の英知により戦争だけは回避して来た。
元来、富国強兵を目指す領主達は、小さな賢者の石を集めて巨大な賢者の石を生成する事で、その目標を達成しようとした。
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