第1通:俺のファン1号、聖母マリアへ

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空手で知り合った黒帯の先輩に「将来の進路で迷った時は自分が子供の時に何になりたかったかを思い出すといいよ。」と言われた事がある。 俺はまだ8歳で空手を始めたばかりだった。 当時の俺には手が届かない黒帯の先輩から聞く「何になりたかったかを思い出す」という行為は何故か凄く重要な事に思えた。そして実際に人生のフェーズで立ち止まりそうなった時に自分を救うきっかけとなった。 俺が子供の時は何になりたかったか? 10歳、子供と判断してよいときだ。その時の俺は漫画を原作にしたサスペンスドラマの主人公になりたかった。より正確にいうと、そのドラマの主人公というよりは、主人公を演じているその俳優、その人になりたかった。 主人公は某有名事務所の売出し中のアイドルだった。 男が男に惚れるってやつだ。念のためだが俺はゲイでもバイでもない。 当時、俺は兄と一緒に通っていた空手で忙しかったので、夜は早く眠りたかった。しかし、そのドラマがやる日は夜更かしをして、終わった後は鏡に向かって覚えたての主人公のセリフを言いながらアクションシーンの真似事をやっていた。 ドラマの日の夜更かしの当初、母親は早く寝るようにと注意していた。しかし普段は大人しく積極性が皆無な俺が夢中になっている姿をみて何か感じるものがあったのだろう。 考えてみれば、母親が俺のファン第1号だな。
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