第3通:Dear God in a Filed

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女性にも性欲があるというが、俺ら第2次性徴期まっさかりの大声で叫びたくなるようなひどい喉の渇きのような切羽詰まったものではないと思う。 俺の第2次性徴期はアイドルというユニークな人生を歩む事を補足編にしたいと訴えるかのように、これは俺が生まれる前から立っている筋書き如く揺るがない勢いでやってきた。 *********************************************************************************************************** 念願のオーディションと初収録後の帰路、新幹線の中で感じた「もう後には戻れない」と感じた直感は的中した。 事務所はオーディションの翌週末に俺を東京に呼んだ。また都合がつけば両親のどちらかが一緒に来て欲しいとの事だった。 内容は詳しく知らされていなかったが、喜ばしい事と受け止め、先方の希望通り土曜日の午前中に俺は母親と東京に向かった。 まずは事務所に併設されているダンスレッスン場を母親と一緒に見学した。 午後は俺だけ再度呼ばれ、20代前半の男性の先生からダンスの基礎的な個別レッスンを受けた。 俺がレッスンを受けている間、母親は事務所のスタッフと今後の活動の説明を受けているようだった。 レッスンと説明が終わったのは夕方5時近くだった。 母親と一緒に歩いてホテルに戻る途中、地元には店舗がないファミレスがあったので母親はここで夕飯を食べようと言った。 オーダーした料理が出てきた頃、母親は今日の午後事務所から説明を受けていた内容を教えてくれた。それは『今後、毎週土日は東京でレッスンを受けて欲しい。レッスン費用は不要、かつ移動や宿泊などにかかる諸経費は事務所が払ってくれる』というものだった。 どうやら俺はオーディションに合格したらしい。タラコスパゲッティーを食べている俺の顔が即座にパァァッと明るくなったのを見て母親は聖母のような微笑みをした。 事務所でこのオファーを受けたとき、母親はもの凄く不安だっただろう。まだ13歳の子供を毎週東京という大都市に通わせ、かつ芸能界とう後先がわからない場所に入れるなんて相当思い切った決断だ。 履歴書を送った時点である程度覚悟していたかもしれないが、現実になると俺より不安だったに違いない。  
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